作家の北杜夫さんが亡くなったそうだ。
私はこの人の影響で船旅が好きになった。
ネット上でも北さんの死を悲しむ声が多く見られるが
読者だけでなく、同業者にもこれほど愛されてた人は少なかったんじゃないか。
森茉莉さんが以前書いてたエッセイなんか読むと
人見知りの北さんが躁になってたまにパーティーに来たりすると
みんな北さんと話をしたくて列を作って並ぶとか。
森茉莉さんも、人と話をするために並ぶなんて気に入らないけど
北さんが好きだから並んでしまうと書いてておかしかった。
当の北さんは子供のように床の上にあぐらをかいてニコニコお寿司を頬張ってエビのしっぽを並べてるとか。
三島由紀夫とのエピソードも面白かった。
新人の頃いきがって三島にいちゃもんをつけたけど、
次に会った時、三島は「はじめまして」と忘れたふりをしてくれたとか
その後も、
母親の事を「お母さま」と言ってしまったら「自分も『お母さま』ってあだ名付けられてた」てかばってくれたり
結婚が決まったら真っ先にお祝いをくれたりして
弟のように可愛がられてた話とか。
三島が晩年ファナティックな活動に没頭するようになってからは交流が少なくなって
何かの集まりで遠くから目が合って、躁状態だった北さんが思わず敬礼をしてしまったら
三島がゆっくりと目を逸らし、その後まもなくあの事件になった話とか。
思い出されることは数え切れない。
ご冥福をお祈りします。